#78 鳥取から京都経由で
 
 
 12月は、初めての土地を訪れました。鳥取県といえば民藝。隣の島根県には何度か行って
 いるのに、何故こちらには来なかったのか?窯元もたくさんあるし、いくつか愛用してもい
 ますが、その他のことはほとんど知らなかったのです。行ってみれば、さすがに手仕事の
 メッカです。おいしい日本酒に切れ味のいい包丁など、広くは知られていないとしても、掘
 り出し物のように、魅力的なものがあります。
 それにしても不思議な土地です。山の向こうは晴れているのに、西を向けば黒い雲が、気が
 つくと雨が降り出して、慌てて傘をさすという感じ。変わりやすいお天気は、いつものこと
 のようです。傘を持って出かけるのは、日常的なことと聞いてびっくりです。
 若桜(わかさ。なんと美しい地名でしょうか)の蔵元を訪ねると、雪がやんだばかりの景色
 が、これもまた美しく、空気も一段と清々しく感じました。
 
    
  
 
 帰りはちょうど21日だったので、京都の用事のついでに東寺に寄りました。終い弘法はも
 のすごい人出で、今までで一番多く感じるほどです。お餅に豆類、おまんじゅう、駄菓子、
 干し柿、野菜、お漬け物と、暮れからお正月の食べ物もいろいろ。肝心の骨董市は、ちょっ
 と押され気味の様子なので、暮れ以外のほうが落ち着いてたくさん見られるかな、と思った
 のは、あまりの人の多さ故の錯覚なのかも?早々に退散しようと思った時、いつもはほとん
 ど見かけない民兵焼の黄色い鉢を入れ子で3つ見つけました。
 たぶん、けっこう安く買えたかな?と気分よく東寺を後にして、少しお菓子を買い、珍しく
 明るいうちに新幹線に乗りました。時間が早いといいことがあるもの。晴れた空の向こうに
 は富士山。来年はどうか穏やかな年になりますように、と思わずお願いしました。 

 本当は、鳥取の前に唐津、有田、波佐見と陶磁器の産地の取材にも行きました。そのことは
 またいずれ。発売されたばかりの、フィルムアート社刊「〈民藝〉のレッスンーつたなさの
 技法」には、民藝と食卓について書く機会がありましたし、 2011年は、器に関わることが
 多くなってきた年でした。2012年はどうなるでしょう。使い心地のいい器をきっかけに、
 自分で料理をするようになる、ということだってあるでしょうから、私なりの提案を続けて
 行くということかなと思います。
 そういえばこの間、テレビのニュース番組かなにかで、最近はひと手間かけて食べる傾向が
 ある、という話をしていました。マーケティングの専門家だったと思いますが、それは言葉
 を失うほどの呆れた内容。何をもってひと手間かけると思ったら、コンビニのおむすびをお
 茶碗に入れ、 顆粒のだしを直接ふりかけて、さらにポテトチップスを砕いてトッピングして
 お茶漬け?のような悪い冗談としか思えないことをしていました。
 しかもショックなことに、それを語っているのは女性です。本気だとしたら怖い。テレビ用
 の演出、話題作りの仕込みであってほしい。そんなひと手間なら、そのまま食べた方がおい
 しいいに決まっています。ほんとうに油断ならない、食まわりのいろんなこと。ちゃんと考
 えていかないと。
 
 



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