#69 ひとりひとつのお茶碗を持って

明日発売のクウネル(マガジンハウス)の中で、震災以来、自分なりに考えていたことを書
くチャンスがありました。東日本に住み、料理に携わる者として考えるべきことがたくさん
ある、けれどこれからどう考えていこう、と焦りまくって過ごした半年間でした。いろいろ
考えの道筋を作っていくと、辿り着いたのは、ひとつのお茶碗のことでした。今までずっ
と、誰でも何かひとつ作れる料理を持っていればいいのに、とその効用の確かさや面白さ、
豊かさを伝えようと思って来たけれど、ここへ来て、これからの暮し方という課題が加わっ
て、何故そうなのかという理由がはっきりしました。はからずも、震災という大きな出来事
によって気づかされたわけです。
もし自分で少しでも準備しておくようになれば、暮らし方のリズムも少し変わっていくで
しょうし、何かを諦めるのではなくて、何かを選ぶ考え方に変わるのではないかという気が
します。自分のことで言えば、毎月の鎌倉通いも4ヶ月目に入って、それは一ヶ月の最後の
方の週末近くの自分の予定に完全に、そして自然に組み込まれています。気持ちの変化とし
ても多少あって、仕事や遊びなんでも、いつでも全部決めずに、すこし隙間をあけて白紙、
空き地のような部分を残しておくのですが、その空白が占める割合が少し大きくなったよう
な気がします。

たぶん、書いた原稿そのままだったら到底ページ数が足りず、しかももっと過激な発言にな
っていたはず。誰でもひとつは料理をするきっかけ作り、というところに落とし込む目的が
ありますから、この半年起こったこと、思ったことの表現としては、少し控えめな出来です
が、一見普通に生活していても、心細く不安なのは皆同じと思うので、日頃作って便利だと
思うものを勢揃いさせました。大事なのは、今日この一日をどう過ごすか、で
すからね。
大げさな何かではなく、あくまで日常のこと、日々の些細な食べ物のことをぞれぞれに考え
るようになって、そのまんまの味が一番だよね、と思うようになれば、世の中の過剰な味つ
けも少しは変わるだろうなと思います。流行りのB級グルメも、食べ物としては勢いがあ
っていいのですが、味つけは単純、自前の調味料で、しかも炭水化物ばかりではない、バラ
ンスが取れたものになったりすれば言うことなしです。そういうものが人気NO.1になる日が
くればいいのにと思います。
では、あとはクウネルで。今度の週末、作っておけるものがたくさんあると思います。















































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